DX推進の取組

IT・DX方針

Ⅰ.はじめに

<新たな墓園の姿を求めて>

多くの沖縄県民の皆様に支えられ、関係各位のご指導、ご鞭撻によりまして、沖縄県メモリアル整備協会も発足から30年の星霜を重ねてまいりました。

お墓は人生の終着点であり、その故人を偲ぶ記念碑です。
そこには宗教的な観念や儀式が介在することが多いのですが、このような宗教観は故人を祭祀するための具体的な行動指針とも考えられます。

沖縄では比較的宗教観が希薄で、先祖崇拝的な思考が中心ですが、
故人を偲ぶ気持ちに違いはありません。

一方、最近では、永代供養という名の下に墓園の管理者等による代理の祭祀や、墓地そのものの期限付きの利用、IT利用によるヴァーチャルの墓参、樹木葬、海洋散骨など、お墓の姿が大きく変化してきました。

弊財団はこのような激動する時代の中で、沖縄らしさを保ちながら、多様なニーズに合わせて、心から故人を偲ぶに相応しい墓園のあり方を追求していきたいと思います。

2026年1月
公益財団法人沖縄県メモリアル整備協会
代表理事 堤 純一郎


Ⅱ. 設立目的・経営理念・事業方針

【設立目的】

この法人は、良質な墓地を県民に提供すると共に、祖霊祭祀の霊域たる墓地の環境整備を  永続的に行うことにより、県内の墓地不足の解消及び墓地の近代化を促進し、県民の崇祖の 念を高め、もって公共の福祉に寄与するために設立された公益法人である。


【経営理念】

生成発展を続ける沖縄の社会と共生し、「やすらぎの場」の創造に理想を追求し続けることが、私たちの事業に対する基本姿勢である。この基本姿勢で日常の業務を推進することで、 地域社会に貢献し公益法人として持続的成長を実現する。


【事業方針】

  • ①地域のニーズに応じた管理型公園墓地の建設
    県内8カ所にメモリアルパークを運営。各自治体の都市計画に留意し、周辺の生活環境に配慮した施設建設を心がけ、いつまでも安心してお参りいただける環境をご提供いたします。

  • ②散在する個人墓地の改葬を促進年間平均400件以上の改葬をサポート。自治体の手続きから遺骨の移動まで一貫したサポートを行い、個人墓地からの改葬を促進し、地域の住環境の改善に寄与しております。

  • ③家族形態・ライフスタイルの変化に合わせた葬送の自由を実現
    継承者がいない方、単身の方など、お墓を持つこと自体が困難だとお感じの方々に対し、永代供養墓や期限付き墓など多様な供養の形をご提案しております。


Ⅲ.これまでの実績

当協会は設立以来、沖縄県内の墓地不足を解消して快適な供養環境をご提供するために、沖縄県内8か所に管理型公園墓地を運営しています。また、永代供養や一時預かり、期限付き墓、室内墓所等、時代の変化に対応した商品サービスを開発・提供してきました。さらに近年では、古いお墓の改葬を求める県民の声にもお応えして、改葬作業の体制を整え、現在では年間平均400件の改葬を実現するまでになっています。

現状の体制の実現において、IT技術の活用とDX推進は不可欠です。当協会では、自社開発の墓地運営管理システム(CRM)をオンプレミス環境にて構築し、全9拠点をVPNで接続することにより、契約管理、区画管理、改葬業務、法要管理、顧客対応を統合した運営基盤を構築してきました。また、9拠点の内線電話網を統合しCTIと連携させることで、問い合わせ対応の高度化と業務の平準化・迅速化を実現しています。

上記に加え、セールスフォース(SFA)を導入し、顧客情報や商談・行動履歴を一元管理し、営業プロセスを可視化・自動化することで属人化を防ぎ、チーム全体での情報共有や案件の進捗管理を行うことで、営業生産性の向上と成約率のアップを実現しています。更に、CRMとSFAを双方向連動させることで、データの一貫性を保ちつつ、少人数体制においても効率的な運営を可能としています。


Ⅳ.IT・DX方針について

当協会は、高齢化の進展、家族形態の変化、県外在住者の増加といった社会構造の変化に加え、データ活用やデジタル技術の進化が供養の在り方や墓地運営の形態に大きな影響を与えつつある状況を重要な経営環境の変化として認識しています。

従来、墓地・霊園運営は来園型を前提とした管理・供養サービスが中心でしたが、永代供養という名の下に墓園の管理者等による代理の祭祀や、墓地そのものの期限付きの利用、IT利用によるヴァーチャルの墓参、樹木葬、海洋散骨など、お墓の姿が大きく変化してきました。加えて、効率的な管理運営や説明責任の高度化が求められており、デジタル技術を活用した運営モデルへの転換が不可避となっています。

当協会は、これらの環境変化を踏まえ、既に全拠点で運用している基幹システムによる統合管理基盤を強みとして、墓地運営の高度化と新たな顧客体験の創出を両立するデータ駆動型の事業モデルへの進化を目指します。

具体的には、デジタルサービスを通じて、時間や距離に左右されない供養の形を提供するとともに、蓄積される運営データを活用した経営判断の高度化、公営墓地運営支援への展開等により、持続可能な墓地運営モデルの確立を図るものです。

当協会は、公益性を重視しつつも、デジタル技術を活用した業務改革とサービス革新を経営戦略の中核に位置付け、地域社会に必要とされ続ける霊園運営法人としての価値向上を目指します。


Ⅴ.中期経営計画およびDX推進計画について

当協会は、発足30周年を機に、2025年~2030年における中期経営計画およびDX推進計画を策定しました。このDX推進計画は、既存の統合基盤を前提として、新たな顧客価値を創出するサービスDXを追加的に実装するものであり、業務効率化の段階を超えた価値創出型DXへの転換を図る。

【2030年に目指す姿】
「時代の変化をつかみ理想の「想い」と「場」を創造し続けるオンリーワン法人」
基本方針1:事業領域の拡大と質の追求  基本方針2:組織力の強化

1.顧客体験DX戦略

  • 目的:持続可能なサービス提供と新参拝体験の創出
    来園型サービスを前提としてきた従来モデルから、デジタル技術を活用したハイブリッド型供養サービスへの転換を図る。

  • 【久遠の礎のDX(デジタル久遠の礎)】従来の石材を用いた記名彫刻については、設置スペースや立地環境に制約が生じつつあり、将来にわたり同様の形で拡張していくことが困難になってきている。この課題に対し、本法人ではデジタルサイネージを活用した「デジタル久遠の礎」を導入することで、限られた空間の中においても故人の名前と想いを継承できる新たな仕組みを構築し、持続可能な供養サービスの提供を実現する。

  • 【遠隔参拝システムの構築】遠隔参拝は、高齢化の進展や県外在住者の増加、離島地域を含む地理的制約等により、墓所への来園が困難な利用者が増加している状況を踏まえ、参拝機会の確保および供養の継続性を支援するための顧客体験DX施策として位置付ける。また、来園型参拝とオンライン参拝を補完し合うハイブリッドな供養モデルの構築を目指す。

2.マネジメントDX戦略

  • 目的:経営資源の可視化と意思決定の迅速化
    基幹システム(CRMおよびSFA)に蓄積される契約情報、区画管理、改葬履歴、法要実績、問い合わせ履歴等のデータを活用し、拠点別・事業別の状況を横断的に可視化することにより、経営層による迅速な意思決定を可能とし、資源配分の最適化、公営墓地運営支援事業への展開判断等に資する経営基盤を構築する。

  • 【ERPの構築と改良】既存の統合基盤に加え、基幹業務の一元管理だけでなく業務データの可視化とリアルタイム共有により、意思決定の更なるスピード向上と業務の標準化の実現を目指す。

  • 【業務処理の自動化(RPA導入等)】
    定型的・反復的な事務作業を自動化し、人手作業によるミス削減と業務時間の大幅短縮を図り、労働力の効率化、最適化に繋げる。

  • 【タレントマネジメントの導入】
    職員のスキル・経験・評価・キャリア情報を一元管理。適材適所の配置や計画的な人材育成を進め、組織力の最大化と人材の定着に繋げる。

3.業務プロセスDX戦略

  • 目的:業務効率化と生産性向上による人的資源の最大化
    RPAやAI等の情報処理技術を活用し、受付・契約処理、帳票作成、データ入力等の定型業務の効率化を進めることにより、職員が専門性を要する業務に注力できる体制を整え、サービス品質と運営効率の両立を図る。

  • 【受付契約業務DX】
    申込受付から契約締結までの業務をデジタル化・一元管理。書類作成や入力作業を効率化し、来園者の利便性向上と職員の業務負担軽減を図る。

  • 【改葬業務DX】
    改葬に関わる業務のデジタル化推進。手続きの効率化や受付から改葬実施までの迅速化、職員の業務負担軽減を図る。

  • 【スペシャリスト人財・デジタル人財の育成】
    専門知識を持つ人財の採用やDXを推進できる人財を計画的に育成。研修や実務を通じてスキル向上を図り、持続的にDXを推進できる組織体制の構築を目指す。


Ⅵ.DX戦略推進体制について

1.DX推進室の新設

当協会は、DX戦略を組織的かつ継続的に推進するため、理事会承認の下、2025年4月に「DX推進室」を新設しました。DX推進室は、各部門と連携しながらDX施策の企画立案、進捗管理、効果測定、外部パートナーとの調整等を担い、DX戦略の実行責任を負う組織として位置付けます。また、経営層が定期的にDX施策の進捗を確認するレビュー体制を設け、経営判断とDX施策を密接に連動させることで、戦略の実効性を確保する。


2.デジタル人材の育成・確保に関する方針

DX推進を持続的に行うためには、全職員のデジタル活用力向上に加え、専門的知見を有するデジタル人材の育成および確保が不可欠であるとの認識のもと、人材戦略をDX推進の重要な柱の一つとして位置付ける。育成面においては、RPAやAI活用に関する基礎研修、業務改革を担うリーダー層の育成、情報セキュリティ意識向上のための研修等を計画的に実施。人財確保の観点では、IT人材確保の難しさを認識した上で、多様な手法を検討し、段階的に体制の強化を図る。あわせて、DX人材採用の先行事例から得られるノウハウを参考にしながら、当協会に適した採用手法や訴求方法を整理し、墓地・霊園運営という公益性の高い分野におけるDXの社会的意義を積極的に発信することで、専門人材の確保につなげる。


3.外部組織との連携

NPO法人ITコーディネータ沖縄から支援を受け、DX推進計画策定やセキュリティ対策強化に向けたコンサルティングを実施。また、システム構築やサポートを行う外部ベンダーとの協力体制を強化しました。これらの取り組みを通じて、外部支援に過度に依存しない自走型DX推進体制の確立を目指します。


Ⅶ.最新の情報処理技術活用のための環境整備の具体的方策について

当協会は、DX戦略を着実に実行するため、既存のオンプレミス型基幹システムを中核としたIT基盤を活用しながら、DX施策に必要な機能拡張およびシステム連携を計画的に実行する。


1.ITインフラの拡充と更新

全9拠点をVPNで接続した統合運営基盤、内線電話網およびCTI連携、CRM/SFAとの連携といった現行システム資産を基盤とし、既存システムの改善と新機能の追加を継続的に実施する。


2.新システムの開発と導入

新サービスに対応するアプリケーション開発・連携プロジェクトを段階的に実施。既存システムを中核として、新システム導入と整備を継続的に実施することで経営判断および顧客体験の高度化に繋げる。


3.新技術の積極的な導入

先進的情報処理技術を積極的に活用し、職員の判断や専門性を支援する形で業務高度化を図る。IT投資については、中期経営計画と整合させた形で優先順位を設定し、効果検証を行いながら実施することで、限られた経営資源を有効に活用する。


これらの取り組みにより、既存基盤を活かしながら最新技術を取り込み、持続的なDX推進を行う。


Ⅷ.戦略の達成状況に係る指標について

DX戦略の実効性を確保するため、その達成度を測る指標(KPI)を定め、指標に基づく自己評価と継続的な見直しを行う。KPIは「顧客体験DX」「マネジメントDX」「業務プロセスDX」の三領域ごとに設定し、DX推進室が中心となって集計・分析を行う。

■ KPIの主な内容

  • 1. 顧客体験DX
    デジタル久遠の礎および遠隔参拝システムの利用件数、アンケート実施による参拝者満足度等を主要指標とする。

  • 2. マネジメントDX
    CRMおよびSFAの高度化による意思決定期間の短縮、人的資本の情報開示による各種人材における可視化情報を指標とする。

  • 3.業務プロセスDXタブレット契約率、受付・契約処理時間の短縮率、業務の標準化率、職員一人当たり処理件数等を指標とする。

経営層は、事業部門およびIT担当部門と連携しながら、KPIの達成状況、デジタル技術の動向、自社ITシステムの運用状況等を踏まえた課題の把握・分析を行い、必要に応じてDX戦略の見直しに反映する。DX施策の進捗および成果については、四半期ごとに中期計画推進会議へ報告し、中期経営計画との整合を確認しながら改善を進める。


Ⅸ.戦略推進等を図るために必要な情報発信について

当協会は、経営ビジョンおよびDX戦略の実現に向け、理事会の承認を経て、DXの方向性や進捗状況について対外的な情報発信を行う。情報発信にあたっては、単にDX計画や資料を公開するだけでなく、代表者自らが定期的にHP発信、講演・セミナーなどを通じて主体的に情報を発信することとする。
また、墓地・霊園運営を取り巻く社会環境やデジタル技術の進化を踏まえた経営ビジョン、DX戦略の全体像、DX推進体制、IT基盤整備の方針、成果指標(KPI)および達成状況等について、各種説明機会を通じて公表し、利用者、自治体、関係機関等のステークホルダーとの対話を重視する。
これらの情報発信においては、DXを通じて、どのような社会的価値・事業価値を創出していくのかを分かりやすく伝えることを基本方針とする。また、代表者自らの発信により、DXの重要性を内外に示すことで、組織全体の意識統一とステークホルダーからの信頼確保につなげる。


Ⅹ.情報処理システムにおける課題の把握について

1.課題の把握のための体制構築

当協会は、DX戦略の実効性を高めるため、理事長を実務執行総括責任者とし理事会監督のもと、DX施策の進捗およびITシステムの状況を統括的に把握する体制を構築する。

2.施策の進捗及び達成度の検証および報告

DX施策の進捗および達成度については、「顧客体験DX」「マネジメントDX」「業務プロセスDX」の各領域に設定したKPIにより定量的・定性的に評価するとともに、財務指標との関係性を整理し、経営成果に与える影響を継続的に検証する。また、定期的に経営会議に報告し、意思決定に活用することで、迅速な改善サイクルを回す。

3.戦略及び施策の見直し

理事会は、事業部門およびDX推進室と連携しながら、デジタル技術の動向、基幹システムを含む自社IT環境の現状、新サービス導入に伴う課題等を把握・分析し、その結果をDX戦略および個別施策の見直しに反映する。

4.モニタリング力の向上

当協会は、DXに関する理解を深めるため、外部専門家の知見も活用しながら学習機会を設け、DX施策に対するモニタリング能力の向上を図る。


上記の取り組みを通じて、企業価値向上に資するDX推進を経営レベルで継続的に監督・高度化していく。


Ⅺ.サイバーセキュリティ対策の推進について

当協会は、DX戦略の実施にあたり、サイバーセキュリティ対策を経営上の重要課題として位置付けている。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が推進する「SECURITY ACTION(セキュリティアクション)」において二つ星(★2)を宣言し、組織として情報セキュリティ対策に取り組む。
この宣言を踏まえ、DX推進室を中心に、職員向けの情報セキュリティ教育の実施、個人情報・契約情報等の重要情報の適切な取り扱いに関する内部ルールの周知徹底を継続的に行う。また、外部専門家の助言も活用しながら、脅威動向の把握と対応方針の見直しを行い、DX施策を安全に推進できる体制を維持する。


Ⅻ.さいごに

当協会は、既存の基幹システムを中核としたオンプレミス型運営基盤およびVPN統合ネットワークによる管理ノウハウを、公営墓地の指定管理業務や自治体支援へ展開し、地域インフラとしての墓地DXモデルの確立を目指します。
これまで培ってきた墓地運営の専門性とITを活用した効率的な管理手法は、公営墓地が抱える無縁墓問題、管理コストの増大、後継者不足といった課題の解決に貢献できると考えています。
デジタル技術を活用した運営ノウハウの体系化を進め、沖縄県内の自治体と連携しながら、持続可能な墓地管理モデルを地域全体に広げていくことで、公益法人としての社会的使命を果たしてまいります。