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沖縄の改葬が「タナバタ(旧暦七夕)」や「ユンヂチ」が選ばれる理由?現代の進め方ガイド

沖縄の改葬が「タナバタ(旧暦七夕)」や「ユンヂチ」が選ばれる理由?現代の進め方ガイド

沖縄では、「(お墓を引越す)改葬はタナバタ(旧暦七夕)が良い」「改葬はユンヂチの年に」などといった言い方を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。

 

実際に「この時期以外に改葬を進めるのは不吉では?」と不安に思い、時期を迷っている方も少なくありません。

 

しかし、こうした背景には沖縄独自の信仰や文化、歴史的な風習があります。なぜ沖縄の旧暦7月7日に行われる「タナバタ(旧暦七夕)」や「ユンヂチ」が改葬に選ばれるのかを知っておくと、現代においてどう判断すべきかも見えてきます。

 

この記事では、沖縄ならではのお墓を引越す「改葬」にまつわる文化背景や現代の考え方まで、わかりやすく解説していきます。

 



 

 

沖縄ではなぜ「改葬はタナバタやユンヂチに」と言われるのか


沖縄ではなぜ「改葬はタナバタやユンヂチに」と言われるのか

 

沖縄では、昔から改葬や墓じまいの時期について「タナバタやユンヂチを選ぶと良い」と言われてきました。

 

その背景には、沖縄独自の信仰や文化的な感覚があります。

 

沖縄の古い文化では、お墓を動かすこと・閉じること・改葬することは「穢れ(けがれ)」に関わる行為とされてきました。穢れが残ることで家に災いが及ぶのではという不安や、祖霊(カミ)を怒らせてしまうのではという意識が、今なお一部の地域や家庭では色濃く残っています。

 

そこで選ばれてきたのが、「日無し(ヒナーシ)」とされる特別な日や時期です。神様の目が届かない時期に行うことで、穢れや祟りを避け、安心して改葬を進められると考えられてきました。

 

タナバタやユンヂチが選ばれる理由も、まさにこの「ヒナーシ」の考え方に深く根付いています。

 

この後は、沖縄の改葬文化の背景とともに、なぜタナバタやユンヂチが選ばれてきたのかを詳しく見ていきましょう。

 

そもそも「改葬」とは?

改葬とは、「すでに埋葬されているご遺骨を、別の場所へ移すこと」を意味します。
沖縄では、戦前に建てられた昔ながらのアジ墓(按司墓)や、山間部や海辺の個人墓地など、管理が難しくなった場所から霊園や納骨堂へ移すケースが増えています。

 

また、継承者の不在や、跡継ぎが本土に出て戻らないなどの理由から、お墓の引っ越し(改葬)や永代供養への切り替えを検討する家庭も増加しています。

 

とはいえ、「改葬って縁起が悪いのでは?」「バチが当たるのでは?」と不安を抱く方も多いため、改葬は家族や親族でよく話し合い、正しい手順で進めることが大切です。

 

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沖縄の「タナバタ(旧暦七夕)」と全国の七夕の違い

全国的には、7月7日の「織姫と彦星が年に一度会うロマンチックな日」として知られる七夕ですが、沖縄では旧暦で七夕を祝います。
しかもその意味合いは大きく異なり、ご先祖様に旧盆(ウークイ)へのご案内をする、宗家・本家(ムートゥーヤー)による大切な節目とされています。

 

このタナバタ(旧暦七夕)は「ヒナーシ(神様の目が届かない日)」ともされており、ユンヂチ同様にお墓や仏壇に関する行事を進めるのに適した日と考えられています。

 

地域によっては、ユンヂチの年回りでないときに、タナバタ(旧暦七夕)を選んで改葬や仏壇事を行う家庭も多く見られます

 

沖縄の改葬文化と「祟り」への意識

 

沖縄では、お墓に関わる行為そのものに「穢れ(けがれ)」の意識が根強く残っています。

 

改葬や墓じまいは、「お墓を動かす」「閉じる」という行為になるため、かつては「祟り(たたり)があるのでは」「家に悪影響が出るのでは」といった恐れや忌避感を抱く人が多くいました。

 

この背景には、祖霊(カミ)の存在を強く意識する沖縄独自の信仰があります。ご先祖様がきちんと祀られている状態(お墓やトートーメーの安定)こそが家の守りになる。反対に動かすことで怒りや祟りを招くという考え方が長く受け継がれてきました。

 

また、沖縄には「天蓋(てんがい)」や「ウグァンブスク(御願不足)」という言葉もあります。これは供養が不足することで災いが起きるとする考え方で、「お墓を動かすのに正しい供養が伴っていない場合、祟りが起こる」という意識につながっています。

 

こうした穢れや祟りの意識が根付いているため、少しでも安全に進めたいという思いから「日無し(ヒナーシ)」の時期を選ぶという発想が生まれたのです。

 

そのひとつがタナバタであり、もうひとつがユンヂチ。いずれも神様の目が届かないとされる「ヒナーシ」の時期として選ばれてきた背景があります。

 

「日無し(ヒナーシ)」だから改葬に選ばれるタナバタ

沖縄の「タナバタ(旧暦七夕)」と全国の七夕の違い

 

 

沖縄では、ユンヂチの年回りではない年に改葬を進める場合、旧暦の「七夕(タナバタ)」がよく選ばれます。

 

この旧暦七夕は、「ヒナーシタナバタ(日無し七夕)」とも呼ばれ、神様の目が届かない「ヒナーシ(日無し)」の1日として認識されている特別な日です。

 

全国的には織姫と彦星が天の川で再会するロマンチックな日として知られていますが、沖縄の旧暦7月7日に行われる旧暦行事「タナバタ(旧暦七夕)」にはまた別の文化的意味があります。

 

例えば、亡くなって間もない方の魂が、家族などこの世に残る人へ会いにくる日、という伝承が地域によって語られたり、また、ムートゥーヤー(本家・宗家)の家族がこの日にお墓参りを行い、ご先祖様に旧盆のご案内をする風習もあります。

 

このように、「神様の目が届かない日=穢れが許される日」として、タナバタはお墓の掃除や軽い改修、必要であれば簡単な儀式を行うのにも適していると考えられてきました。

 

改葬のような重要な判断も、穢れや祟りのリスクを最小限にしたいという想いから、「タナバタなら大丈夫」と背中を押してくれる日となることもあるのです。

 

「ユンヂチ」もまた「日無し(ヒナーシ)」として選ばれる理由

沖縄ではなぜ「改葬はタナバタやユンヂチに」と言われるのか

 

タナバタと並んで改葬や仏壇事に選ばれてきたのが「ユンヂチ」です。

 

ユンヂチとは、旧暦でうるう月(閏月)が挿入され、1年が13ヵ月になる年のことを指します。この年はもともと存在しなかったはずの「余分な1年」とされ、沖縄では神様の目が届かない期間=ヒナーシとして特別視されてきました。

 

特に沖縄では、この1ヵ月だけでなく、旧暦13ヵ月全体を「ユンヂチの年」として受け止める風習があり、「この年にやっておけば安心」「この年だから許される」といった考え方が根付いています。

 

ユンヂチの年は、「家のことを進めるにはちょうどいいタイミング」として、お墓や仏壇、位牌などにまつわる様々なことが予定されることが多くなります。改葬もそのひとつです。

 

「ユンヂチの年に改葬をした方がいい」とされるのは、穢れへの意識や、祖霊に対する配慮からくる安心感のあらわれであり、沖縄独自の宗教観と暮らしの知恵が息づく選択と言えるでしょう。

 

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現代ではどう考える?改葬時期の判断ポイント


現代ではどう考える?改葬時期の判断ポイント
沖縄の改葬文化には、タナバタ(旧暦七夕)やユンヂチといった特別な時期を選ぶ背景がありましたが、では現代ではどうなのでしょうか。
文化的な伝統を重んじながらも、生活環境や家族構成の変化により、「必ずしもその日でなければ」という考え方も変わりつつあります

 

ここでは、本州の「閏月タブー」との違いや、現代における柔軟な判断ポイントについて整理してみましょう。

 

本州の「閏月タブー」との違い

沖縄では、改葬の時期として「ユンヂチ」や「タナバタ(旧暦七夕)」が選ばれる傾向がある一方で、本州では「閏月(うるうづき)」そのものが“避けるべき”時期とされてきました。

 

これは、もともと閏月が「通常の暦の流れにない“余分な月”」とされ、不吉である、縁起が悪いという考えが根付いていたためです。特に仏事や家の建築、婚礼、引越しなどの人生儀礼においては、閏月を避ける風習が今でも一部地域に残っています。

 

一方、沖縄ではこの“余分な月”とされる閏月を含んだ1年(旧暦13ヶ月)全体を、「神様の目が届かない=ヒナーシの年」として、むしろ儀式や仏事に適した年と捉える風習があります。

 

同じ閏月でも、意味づけや捉え方が真逆になっているのは、文化背景や死生観、信仰の違いから来ているといえるでしょう。

 

現代では家族の事情・柔軟な判断が主流に

このような伝統的な考え方がある一方で、現代の沖縄では、必ずしも「タナバタやユンヂチでなければならない」という考えにとらわれない家庭も増えてきました。

 

たとえば、仕事や学校、遠方に住む親族のスケジュールなどを優先し、現実的な日程で改葬を進める家庭も多く、「家族が納得し、丁寧な供養ができれば、それが何よりも大切」と考える方も増えています。

 

また、ユンヂチのような“年に一度あるかないか”の機会を待つよりも、「今このタイミングで進めるべきだ」と判断されるケースもあり、近年では民間霊園や行政も、家族に寄り添った柔軟な改葬対応を行うところが増えています。

 

伝統を大切にしながらも、現代のライフスタイルに合った判断をすることが、無理のない改葬を進めるための鍵といえるでしょう。

 

 

まとめ|改葬は「家族が納得できる形」で進めよう


まとめ|改葬は「家族が納得できる形」で進めよう

「改葬は七夕に」「ユンヂチの年が良い」といった考え方には、沖縄独自の信仰や祈りの形が込められています。
「祟り」や「穢れ」への意識、そして「神様の目が届かない日」としての「日無し(ヒナーシ)」──こうした背景が、改葬のタイミングに深く関わっていたのです。

 

ただし現代においては、仕事や家庭の事情など、昔とは異なる生活環境の中で「必ずこの日でなければ」とは限らなくなってきています。

 

大切なのは、故人への敬意と家族の納得感。
信仰や習わしの由来を知ったうえで、「今の自分たちにとって無理のない形」を選ぶことが、心のこもった供養につながるのではないでしょうか。

 

昔ながらの信仰に込められた意味を受け取りながらも、それに縛られすぎず、家族みんなが納得できる形で改葬を進めていく──。
それこそが、今の時代にふさわしい“丁寧なお別れ”なのかもしれません。

 

 



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