ジューハチヤ(十八夜)の御願|観音様への拝み方とお供え物【沖縄の正五九月】

沖縄では、旧暦の一月・五月・九月にあたる「正五九月(しょうごくがつ)」は、厄を祓い感謝を伝える大切な月とされています。
なかでも、十八日(ジューハチヤ)は観音様の「縁日」とされ、家庭での拝みや観音堂参りを通して、家族の健康や子どもの成長を願う日です。
本記事では、沖縄のジューハチヤ(十八夜)に行う観音様への御願の仕方をわかりやすく紹介します。家庭での拝み方やお供え物(ウサギムン)の基本、観音堂での作法、ヒラウコーやシルカビの使い方など、沖縄の風習に沿った拝みの流れを丁寧に解説します。
目次
沖縄のジューハチヤ(十八夜)とは?観音様の縁日と正五九月の関係

◇沖縄では、旧暦の一月・五月・九月を「正五九月(しょうごくがつ)」と呼び、昔から“厄を祓い、新しい力をいただく月”として大切にしてきました。
この時期は一年の節目にあたり、家庭では神々への感謝や祈りを捧げる御願(うがん)が多く行われます。
…この日に行う拝みを沖縄では「ジューハチヤ(十八夜)」と呼び、家族の健康や子どもの成長を願って観音様へ手を合わせます。
もともと観音様は「子どもの守護神」として信仰され、病弱に生まれた子どもや親子の相性に悩む家庭では、観音様に養い親(ヤシネーウヤ)となっていただき、健やかな成長を祈る風習が今も受け継がれています。
…ジューサンヤが“仕事や金運”の祈願であるのに対し、沖縄のジューハチヤ(十八夜)は“家庭と子どもの健康”を守る祈りの日。
どちらも感謝の心をもって日々の無事を願うという点では共通しており、沖縄の人々にとって、暮らしに寄り添う大切な年中行事のひとつとなっています。
・【2025年版】沖縄の十三夜(ジューサンヤ)と関帝王|商売繁盛を願う正五九月の拝み方
沖縄でジューハチヤ(十八夜)の御願を行う家庭とは

沖縄のジューハチヤ(十八夜)の御願は、沖縄のすべての家庭で行われるわけではありません。
もともと観音様を床の間に祀っている家や、特別な祈願ごとがある家庭で行われてきた風習です。
ここでは、沖縄のジューハチヤ(十八夜)を行う代表的な家庭のかたちを見ていきましょう。
観音様を床の間に祀る家
古くから、門中(親族)や家を守護する神として観音様を床の間にお祀りする家庭では、正五九月の十八日に日ごろの感謝を込めて拝みを捧げます。
床の間に掛け軸や木彫り像の観音様を祀り、季節の花や果物を供えて拝む光景は、今でも年配の方を中心に受け継がれています。
この日には、日々の無事への感謝や、家族の健康を祈るとともに、「これからも見守ってください」という願いを込めて拝みます。
病弱な子どもや子年生まれの子の祈願
◇沖縄でジューハチヤ(十八夜)の御願が特に大切にされてきた理由のひとつが、「子どもの守護」にあります。
観音様は“子安観音”として、安産・育児・子どもの健康を見守る神様ともされており、昔から病弱に生まれた子どもや、成長に不安のある子を持つ家庭では、観音様に守りを願う風習がありました。
そのため、子年生まれの子を授かった年に観音様をお迎えし、正五九月の十八日に拝みを捧げる家庭も多く見られます。
観音様への祈りは、「子どもの健やかな成長を願う親の気持ち」そのもの。
この思いが、今も沖縄各地でジューハチヤ(十八夜)の御願として大切に受け継がれているのです。
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ユタによる観音様の仕立て(チヂの導き)
沖縄では、霊的な感受性を持つ「ユタ(巫者)」の方々が、神々の声や導きを受けて自らの守り神を仕立てることがあります。
チヂの導きによって仕立てられた観音様は、そのユタ自身や家族、訪れる人々を見守る存在とされ、沖縄のジューハチヤ(十八夜)には特別な感謝の拝みを行います。
このように、ユタにとっても観音様は深く個人的な守護神であり、沖縄のジューハチヤ(十八夜)はそのご加護に感謝する大切な日といえるでしょう。
家庭での沖縄のジューハチヤ(十八夜)の拝み方とお供え物

沖縄のジューハチヤ(十八夜)の御願では、観音様に日ごろの感謝と家族の健康を祈ってお供え物を整えます。
沖縄では、こうしたお供えを「ウサギムン」と呼び、神様への拝みには欠かせない準備です。
まずは、家庭での基本的な供え方から見ていきましょう。
ビンシーと果物の盛り合わせ

家庭で沖縄のジューハチヤ(十八夜)の拝みでは、お供え物(ウサギムン)に「ビンシー(瓶子)」を利用しても便利です。
ビンシーは、左右に徳利を置き、中央に盃を添えた三点一組の供え物で、神様へお酒をお供えするためのものです。
● お酒(左右の徳利・中央の盃)
● 花米(洗っていない米)を左右に一対
● 洗い米(生米を七回すすいだもの)を中央に一皿
● 果物(りんご・みかん・バナナなど季節のもの)
ウサギムンは見た目よりも“心を込めること”が大切です。
華やかな料理を並べなくても、清潔な器に整えたお供えと感謝の気持ちで十分に通じます。
果物やお酒は、拝みが終わったあと家族で分け合い、観音様からの恵みをいただく習わしもあります。
・【沖縄の御願】屋外の拝みで用いる「ビンシー」とは
ヒラウコー(沖縄線香)の本数とシルカビの用い方
◇お供えを整えたら、観音様の前でヒラウコー(沖縄線香)を立てて拝みます。
神様への拝みには、火を灯した線香ではなく、あえて火をつけない「ヒジュルウコー(冷たい線香)」を使う場合もあります。
ただ、家庭の観音様を拝む際は、火をつけたヒラウコーで問題ありません。
…これは、日本の線香で供える場合は12本+3本分。小さな仏壇では簡易版として日本線香5本を供えても良いでしょう。
この数には、観音様と家族、そして日々見守る祖霊への祈りが込められていると伝えられています。
…ウチカビ(打ち紙)が先祖供養で燃やす紙であるのに対し、シルカビは神様への“感謝を表すお金”として用います。
半紙を三枚重ね、縦半分に折ってから横四つに千切るのが一般的な形です。
・沖縄の線香「ヒラウコー」☆御願内容で違う本数②
家庭での拝みの流れ
◇すべての準備が整ったら、静かな心で観音様の前に座りましょう。
まずは、線香を立て、両手を合わせて日ごろの守護への感謝を伝えます。
その後で、「家族の健康」「子どもの健やかな成長」「日々の安全」など、願いを具体的に心の中で唱えます。
拝みの時間に決まりはありませんが、焦らず、ゆっくりと観音様に語りかけるように手を合わせることが大切です。
最後に、拝み終えたことへの感謝を伝えて一礼し、ヒラウコーの煙が静かに消えるのを見届けます。
この一連の流れが、家庭で行う沖縄のジューハチヤ(十八夜)の基本的な御願です。
観音堂での沖縄のジューハチヤ(十八夜)拝み|外拝の作法と供え方

沖縄でジューハチヤ(十八夜)の御願は、家庭で拝むだけでなく、地域の観音堂へ出向いて祈願を行う家庭も多くあります。
とくに、子どもの健康祈願や特別なお願いごとがある場合は、観音様が祀られたお堂で直接手を合わせることで、より深い感謝と祈りを捧げるとされてきました。
屋外で行う拝みは、家庭での御願よりも準備物が少し異なります。ここでは、観音堂での拝み方と作法を紹介します。
観音堂へ持参するウサギムン(お供え物)

観音堂では屋外での御願になるため、風などでお供えが散らないよう「ビンシー(瓶子)」を使うのが基本です。
ビンシーは、左右の徳利と中央の盃をひと組にしたお供え用の器で、持ち運びもしやすく沖縄の外拝では欠かせません。
● お酒(徳利2本と中央に盃に入れたお酒)
● 花米と洗い米(家庭と同様に左右一対の花米+中央一皿の洗い米)
● 果物の盛り合わせ(りんご・バナナ・みかんなど)
● ウブク(炊いたご飯)またはまんじゅう
[お線香]
●ジュウゴフンウコー(十五本御香)
・日本線香…15本(簡易版5本)
・ヒラウコー…タヒラ半(2枚と半分)
お供え物の内容は観音堂によって少しずつ異なります。
地域によっては「重箱料理(ジューバク)」を供える場所もありますが、沖縄のジューハチヤ(十八夜)では果物やご飯などの素朴な供えが一般的です。
重要なのは、量よりも「丁寧に整える心」であり、拝みの前に軽く手を合わせて「本日は御願に伺いました」と伝える気持ちを大切にしましょう。
ヒジュルウコーとヒラウコーの違い
観音堂では、拝みの際に火を灯さない線香を供える「ヒジュルウコー(冷たい線香)」を用いる家庭が多いです。
これは、屋外で風が強く、線香の火が消えやすいためという実用的な理由のほか、神前では“静かな祈り”を表す意味合いもあります。
①シルカビ(白紙)を小さく千切って座布団のように敷く。
②その上に、火をつけていないヒラウコー(二枚半)を置く。
③両手を合わせ、感謝と祈願を捧げる。
観音堂によっては、あらかじめ線香立て(ウコール)が設けられている場所もあります。
地域の人々が日々守ってきた場ですので、参拝前に地元の方や管理者にひと声かけると、より丁寧な拝みができます。
・沖縄の線香「ヒラウコー」☆御願内容で違う本数①
子どもの健康祈願・家庭円満の御願例
観音様は子どもの守護神であり、また家庭を見守る慈悲の神としても信仰されています。
観音堂での沖縄のジューハチヤ(十八夜)では、以下のような想いを込めて拝む家庭が多く見られます。
「子どもが元気に学校へ通えますように」
「家族が病気やけがなく、一年を過ごせますように」
「家庭の中が穏やかで笑顔が絶えませんように」
拝みのあとには、「いつも見守ってくださりありがとうございます」と感謝を伝えることが何より大切です。
お供え物は、拝みを終えたら丁寧に持ち帰り、果物やお菓子は家族で分け合うのが沖縄の習わしです。
この行為には、「神様からの恵みをいただく」という感謝の意味が込められています。
・沖縄の観音堂巡り|子どもの健康を祈る観音様と琉球七観音の拝所
沖縄の御願に見られる勘違いと注意点

沖縄の御願(うがん)には多くの作法がありますが、家庭や地域によって少しずつ違いがあるため、「どれが正しいの?」と迷う方も多いかもしれません。
ここでは、沖縄のジューハチヤ(十八夜)をはじめとする御願で、特によくある勘違いしやすいポイントを整理してみましょう。
シルカビとウチカビの違い
まず混同しやすいのが、神様へお供えする「シルカビ」と、ご先祖様に捧げる「ウチカビ(打ち紙)」の違いです。
●神様にお金の代わりとして捧げる白い紙。
半紙を三枚重ね、縦半分に折ってから横四つに千切るのが一般的な形です。
火をつけず、線香の下に敷く「座布団」のような役割で、純粋な感謝を表すために使います。
●ご先祖様に「天国で使うお金」を届けるための紙。
お盆や清明祭(シーミー)など、先祖供養のときに燃やして煙にして届けるという意味があります。
この2つは見た目が似ていますが、神様にはシルカビ、先祖様にはウチカビと使い分けるのが正しい作法です。
・【沖縄の御願】拝みに欠かせない「シルカビ」と「ウチカビ」
神様と先祖様で異なる線香の本数
線香(ヒラウコー)も、供える相手によって本数が異なります。
これも沖縄ならではの信仰の違いで、御願初心者には少し分かりにくい部分です。
下記は一般的な家庭で行われる御願(ウグァン)に多い、線香(ヒラウコー)の本数の目安となります。
● 神様(観音様・ヒヌカンなど)…タヒラ半(二枚半)
● ご先祖様(仏壇・墓前など)…タヒラ(二枚)
神様への拝みでは、タヒラ半を用いて「神・家族・自然界」への三位一体の祈りを表すとされています。
一方、ご先祖様への拝みは感謝と報告が主であるため、タヒラ(二枚)となっています。
この違いを意識することで、祈りの対象をより明確に敬うことができます。
お供え物を選ぶ際のマナーと心得
◇お供え物(ウサギムン)に特別な決まりはありませんが、いくつかの心遣いが大切です。
まず、沖縄では豚肉を供える風習はあるものの、沖縄のジューハチヤ(十八夜)では、香りの強いものや肉・魚などを避け、清らかで穏やかな印象の食材を選びましょう。
果物やまんじゅう、ウブク(炊いたご飯)などが最も一般的です。
拝み終わった後は、そのまま放置せず、きちんと持ち帰りましょう。お米やお線香は、その場で供える場所を用意した拝所もあります。
観音堂などでは地域の方が清掃を行っているため、供え物を残すと迷惑になることもあります。
御願は「祈る」だけでなく、「感謝と整え」の心をもって行うもの。
その姿勢こそが、神様への何よりの供え物になるのです。
まとめ|沖縄のジューハチヤ(十八夜)に込める感謝と祈り

沖縄のジューハチヤ(十八夜)は、観音様の縁日であり、沖縄では古くから「家族を見守る日」として大切にされてきました。
日々の暮らしのなかで、感謝の気持ちを言葉にする機会は少ないものですが、この日は静かに観音様の前に座り、心を整える良い節目です。
豪華な供え物や難しい作法よりも、「ありがとうございます」「これからも見守ってください」という素直な祈りの言葉こそが、何よりの御願となるでしょう。
沖縄のジューハチヤ(十八夜)の夜には、昔から「星拝み」と呼ばれる風習もあります。
月や星を仰ぎながら、遠い空の向こうにいる観音様へ手を合わせるその光景は、今も沖縄の各地で静かに受け継がれています。
家族が健康で穏やかに過ごせる日々への感謝と、明日への希望を胸に——。
正五九月の十八日には、ぜひ観音様に祈りを捧げ、心を整えるひとときを過ごしてみてください。
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